今までは楽しそうに通っていたのに、最近子どもがプールに行きたがらない…
なかなか息継ぎの合格をもらえなくて、泣きながら帰ってくるのが見ていて辛い…
指導現場で、私はこういう切実な悩みを数え切れないほど聞いてきました。
楽しくて始めたプールなのに、子どものこうした姿を見るのはショックですよね。
息継ぎは多くの子どもにとって大きな壁になることは事実です。
しかしその原因の多くは、実は息継ぎの技術不足によるものではありません。
むしろこれまで積み上げてきた合格自体が、ブレーキの原因になってしまっているかもしれません。
なぜ合格したはずの泳ぎがブレーキをかけてしまうのか。
この記事では、
・スイミング業界が口を閉ざす「合格=できた」の残酷な真実
・指導者の本音と建前。進級テストの評価項目に載らない、本当の合格基準
・息継ぎの挫折を解消する「究極の脱力けのび」習得法
について詳しく解説していきます。
今のまま無理に練習を続けるより、一度だけ『進級の常識』をリセットして、泳ぎの本当の土台を見直してみてください。それがお子さんの笑顔を取り戻すための、最も確実な第一歩になります。
進級テスト合格の「残酷な真実」。なぜスクールは未完成のまま進級させるのか?
既存のスイミングスクールの多くが「多対一」(1人の指導者に対して複数人の生徒)の指導方式をとっています。
効率化はもとより、すべての子どもに均一な質の指導を提供するためです。
そして進級テスト。これは各スクールが独自の基準を設けて「これができたら合格にする」というシステムです。
進級テストに合格できれば、誰もが嬉しいもの。できなかったことができるようになった証なのですから。
しかし、ここに大きな落とし穴があることを、ほとんどの子どもや保護者は知りません。
ほとんどの場合、スクールは進級基準を泳ぎの「形」で判断します。
たとえば「けのび」。手足をそろえる、頭を水にしまうなどの形を判断し、規定時間沈むことなく浮けていれば合格となります。
しかし、たとえば水に体を委ねられているか?(脱力の要素)のような「感覚的」な部分は、基準に入ってきません。
これは合理的でありながら、スクールの構造上致し方ない基準の設定です。
求められる最低限の形さえ満たしていれば、けのびとして成立はします。
そして何より、脱力のような個々の感覚的な部分を合格基準に入れてしまうと、全ての子に公平な判断が下せなくなってしまうのです。だからこそ絶対的な基準(形)をもって合否を判定しています。
ただし、結果的に未完成のまま進級するというジレンマが起きやすいのも事実なのです。
合格という「免罪符」の勘違い
先ほどもお伝えしたとおり、現場では合格の可否を「形」でしか判断していません。
たとえば70点以上が合格ラインであれば、70点でも100点でも同じ「合格」のスタンプが押されます。
しかし70点だったとすれば、まだ30点分の「改善ポイント」が残されているはずなんです。
そしてほとんどのスクールは、この残り30点部分を妥協して次の級へ送り出すことになります。
しかし子どもも保護者も、「合格」の二文字を見たら「この級の技術はマスターした!」と思い込んでしまいます。
しかし「合格」という結果は、あくまでそのスクールが定めた「最低限のライン」を越えたという報告に過ぎません。
その裏側に隠された「不完全な部分」こそが、以降のステップで大きな壁となります。 コーチから「合格です!」と言われた時、本来なら「どこがまだ不安定ですか?」と聞くといいのですが、今のシステムではそこまで共有されることは少ないです。
改善点の繰り越し、積み上がる負債。
体の力みはすごいけど、けのびの形はきちんとできている。この場合ほぼ合格となります。
ただ当然ですが、この時点で力みをなくすという改善点が消えてなくなった訳ではありません。
そしてこの改善点を補強しないまま次の練習に入り、新たな改善点を残して合格する。
この繰り返しで、進級しながらも改善点という名の「負債」は積み上がっていきます。
そしてその負債は、息継ぎ練習の時に「パニック」という利息を付けて跳ね返ってくるのです。
合格ラインの少し先、「余裕」の貯金を作ろう
確かに70点でも合格はできます。でもギリギリで合格した子は、多くの場合次の級で新しい課題(バタ足や手回し)が出てきた瞬間、余裕がなくなってパンクしてしまいます。
一方で、85点まで『貯金』を作ることができれば、新しい課題が出てきても、その貯金(余裕)を使って冷静に対処できるのです。 この記事で目指すのは、プロのような完璧な泳ぎではありません。息継ぎという高い壁を前にしても、パニックにならないための『心の貯金』を作ることです。」
本来合格するというのは、子どもにとっても保護者にとっても喜ばしいことです。
しかし合格という二文字を信じすぎてしまうと、後にかえって子どもを苦しめてしまう原因になることもあるのです。
大切なのは、合格の先にある『余裕』をどれだけ持てるか。
ここで一つ、大切なことをお伝えします。
もしお子さんがすでにけのびを合格して、バタ足や息継ぎの練習に入っていたとしても、ガッカリする必要はありません。 むしろ息継ぎで行き詰まっている今こそ、この『15点の余裕(脱力)』を取り戻す絶好のチャンスです。
『でもうちの子のけのびが70点なのか85点なのか、親の私には判断できない……』
そう思われるかもしれませんが、安心してください。
この記事の後半では、専門知識がなくてもパッと見てわかる『我が子の脱力レベル・チェックリスト』をご用意しました。
まずは、なぜその『15点の差』が、後の泳ぎで致命的な差になって現れるのか。その仕組みを『力みの積み木』という言葉で解説していきます。
息継ぎで爆発!「力みの積み木」による負の連鎖
この章では、水慣れやけのびといった初歩の段階から積み上がった「力み」の負債がもたらす、息継ぎクロールでの致命的なつまずきについて解説します。
前章でお話ししたとおり、進級テストの合格ラインはあくまで「最低ライン」のクリアに過ぎません。
いわば次の級でそれが活かせるかどうかまでは考慮されていない状態です。
当然の話ですが、級が進むにつれ動作が増えていきます。
(けのび単体→バタ足→けのびキック→手回しクロール→息継ぎクロールといった段階)
けのび単体で全身の力みがあれば、動作付きになるとさらに力みが増していくことは明白です。
Aqua-Demyではこれを「力みの積み木」と呼びます。
動作が増える度に力みも積み重なる。それでも動きだけなら何とかなってしまうこともあります。
問題は息継ぎが加わった時。呼吸は力んだ状態では絶対にうまくいきません。
ここで今までの蓄積された力みが爆発して襲いかかってきます。
力む→吐けない→体が動かせない→顔が出せない→吸えない→苦しい→さらに力む
という負の連鎖に陥ってしまうのです。
そして多くの子どもが息継ぎができないことを、「呼吸が下手なんだ…」と錯覚してしまいます。
でも、そうではないんです。
もちろん呼吸に必要な最低限のスキルを身につけることは欠かせません。
ただ、呼吸を覚えること自体はそれほど難易度の高いものではないんです。
本当の原因は、呼吸そのものではなく、けのびから積み重なった「力みの負債」が、呼吸という繊細な動作を邪魔していることにあります。
これこそが「力みの積み木」の正体です。
実は現場の指導者も、子どもの『力み』には気づいています。 ですがスクールの進級システムでは、形ができていれば合格を出さざるを得ず、かつ多対一で指導をする関係上、けのびまで戻って教え直すことは難しいのが現実です。
一方で保護者の方からすれば、専門知識がない中で我が子のわずかな力みに気づくのは至難の業でしょう。
「原因がわからないまま何ヶ月も合格できない」。 そんな苦しい時間が続けば、お子さんが「プールに行きたくない」と感じ始めてしまうのも無理はありません。
ですが、これまでの練習が無駄になっているわけでは断じてありません。
ただ一つ、最初の段階にある「力み」を取り除いてあげれば、不思議なほど息継ぎは楽になります。
コーチが仕組み上「できない」ことを、保護者のあなたが「見つけて」あげる。 次の章では、パパ・ママでもパッと見てわかる「脱力の判定基準」と、水に体を委ねる「究極の脱力けのび」を覚える具体的なステップを解説していきます。
力みを取り除く究極の「脱力けのび」3ステップ
ここまでの話を聞いて、「完成レベルじゃないまま進級していた可能性があることは分かったけど、進級した以上後戻りはできないんでしょ?どうすればいいの?」と思われた方も多いと思います。そこで、今日からスイミングの練習でも取り入れられる究極の脱力法を3ステップでご紹介します。
これは既に進級して息継ぎ練習の段階の子は「今さら基礎なんて…」と思うかもしれません。
でも、F1レーサーがレース前に必ずマシンの点検をするように、泳ぎが難しくなればなるほど、この『脱力チェック』が大きな差を生みます。 スクールの練習の合間や、休日のプール遊びのついでに、たった3分でいいので試してみてください。
①無重力感を味わう「クラゲ浮き」!
別名は「伏し浮き」です。文字通り、海にふわふわとただようクラゲのように、全身から力をふっと抜いて水に体を預けてみましょう。胸~腰回り(お尻のあたり)だけがプカプカと浮いている姿勢になっていればOKです!
保護者の方から見た子どもの「クラゲ浮き」チェックリスト
- 首の後ろにシワが入っていませんか?(シワがあれば、力んで前を見ようとしている証拠!)
- 背中の一部が、水面からぽこっと小島のように出ていれば大成功!逆に沈んでいたら力みの重みがあるかも?

お子さんに「体がお水に溶けている(ただよっている)感じがする?」と聞いてみてください!本人が「ふわふわしてる」と笑えば、それが脱力成功のサインです!
②85点の余裕をつくる「ふんわりけのび」
次は実際のけのびで脱力できるか挑戦してみましょう。両手足を揃えながらも、決して無理な力を入れないように注意です!これができたら脱力のベースは完成です!
保護者の方から見た子どもの「ふんわりけのび」チェックリスト
- 揃った手の指がグーになっていませんか?(グーは力みの証。ふわふわ~っとお水に漂わせてみましょう)
- 足が棒のように硬くなっていませんか?(親指同士がそっとふれ合うくらいにしてみましょう)
③水を少しだけ動かす「ささやきけのびキック」
前に進むために強く動かそうとしなくてOKです!まずはやさしく水を動かす感覚でバタ足します。
足先でほんの少し波が作れているだけでいいので、ラクを優先してみましょう!
保護者の方から見た子どもの「ささやきけのびキック」チェックリスト
- 動き始めたら、手や首に力が入っていませんか?(ふんわりけのびを思い出してみましょう)
- 無理に大きな波を作ろうとしていませんか?(その無理が力みの負債になります)



「お水に小さく話しかけるみたいに動かしてみて」と伝えてみてください。バシャバシャではなく“トントン”。小さくてもそのリズムが取れていれば動作の緊張の糸はほぐれています!
まとめ
この記事では、息継ぎクロール完成に向けて基礎を見つめ直すことの重要性について解説してきました。
スクールの進級テストに合格するのは、保護者の方はもちろん、何よりお子さんにとって嬉しいことですよね。
合格が自信になって、「また次もがんばろう!」と思えることは、とても素晴らしいことです。
ただ、知っておいてほしい「真実」があります。
「合格」というスタンプは、その技術の「完璧」を意味するわけではない、ということです。
スクールのコーチの仕事は、限られた時間の中で子どもを“合格”させることです。多少の力みや改善点を残していても、最低基準に達していれば次の級に送り出さざるを得ないのが、今の指導現場の限界でもあります。
そしてそれは、付きっきりの個別指導でもない限り、いかようにもし難いのが現実です。
Apua-Demyでは、そんなスイミング業界の仕組みでは救い切れない「わずかな綻び」を、親子の二人三脚で楽しく紐解いていく場所です。
「合格したのに苦しそう」 もしお子さんがそんな壁にぶつかっていたら、一度けのびに立ち返って、親子で「脱力」を遊んでみてください。
息継ぎクロールを笑顔で完泳できるその日まで、私はあなたの「もう一人のコーチ」として、全力で伴走していきます!


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