がんばってバタ足しているのに、なぜか進まないし沈んでいく……。
バタ足をしていると、どうしても途中で疲れてパニックになってしまう……。
指導現場において、このような「バタ足」に関する悩みはとても多いです。
もしその原因が、皮肉にも「一生懸命がんばっていること」にあるとしたら、どう思いますか?
「でもスイミングのコーチには『もっと力強く!』と言われてるし!」 と反論したくなるかもしれません。
ですが、多くの子どもを指導してきた中で、断言できることがあります。
楽に泳ぐためのバタ足は、がんばらなくていいんです。
この記事では 、
・そもそもバタ足の役割は何なのか?
・理想のバタ足に求められる「しなり」の正体
・明日からできる、脚がヘビになる!? “ふわふわバタ足”練習法
について徹底的に解説していきます。
読み終える頃には、今までの「練習の常識」がガラガラと崩れ、「そういうことだったのか!」と感じていただけるはずです。
それではいきましょう!
そもそもバタ足って、何のためにやるの?
みなさんは、バタ足は何のためにやるの?と聞かれたら、どう答えますか?
多くの場合、「前に進むため」「沈まないため」と答えるはずです。
実はこれ、半分正解で半分不正解です。
確かにバタ足を使えば前に進みます。ですが、「進むこと」を最大の目的にしてしまうと、
実はその先の「息継ぎ」で必ずと言っていいほど大きなつまずきを生んでしまうのです。
バタ足で進むのは間違いなの!?
結論から言うと、「結果としては進むけど、それ自体を目的としない」です。
どういうこと?と思ったでしょう。
解説していきます!
バタ足は”がんばって”やるものではない!
スイミングスクールでよく飛び交う、こんな言葉。
- 「もっとバタ足がんばって!」
- 「元気よく動かして!」
このアドバイス自体は間違いではありません。ただ、受け取る側の子どもはこう勘違いしてしまいます。
「バタ足はたくさん、強く動かすのが正解なんだ!」と。
ですが現実はその逆です。 闇雲に力んで足を動かしても、水に正しく力が伝わらず、
「がんばっているのに進まないし、疲れて沈んでしまう」という負のループに陥ります。
大切なのは力任せではなく、適度な「しなり」。 水にやさしく力を伝える「正しい動作のイメージ」こそが、バタ足のゴールなのです。
バタ足最大の役割は”姿勢を保つこと”だった
「でも進まないと合格できないし、結局がんばった方がいいんじゃないの?」
そう疑問に思うのも無理はありません。
たしかに、最初に習う「けのびキック」のテストでは、進む力の100%をバタ足に頼ります。
しかし、その先にある「手回し」や「息継ぎ」が加わったとき、バタ足の役割はガラリと変わります。
バタ足の本当の役割は進むことではなく、「水中で効率よく進むための姿勢(けのびの形)をキープすること」。
いわば、下半身が沈まないように支えてくれる「補助輪」のような存在です。
- 初期 : 進むためのメインエンジン
- 中長期: 姿勢をフラットに保つためのスタビライザー(安定装置)
動作が増えるにつれ、バタ足「で」進むイメージから、バタ足「も」使って姿勢を安定させるイメージに変えていく。 この「役割のシフト」を頭の片隅に置いておくだけで、力みの負債を抱えるリスクは激減します。
バタ足の「しなり」の正体
前章でバタ足の役割については、理解できていただけたかと思います。
「でも”しなる”バタ足ってどうやってやればいいの?」と疑問が残りますよね。
本章では、最低限の力で最大の効率を生む「ヘビ足キック」について徹底解説していきます!
脱力状態を崩さない、理想のバタ足法
水中での動作が増え始めると、どうしても1つ1つへの意識は薄れてしまいやすいです。
そこに「がんばって前に進まないと」、「沈まないようにしないと」という思考が入ってくると、
脱力どころかあちこちに余分な力が入り、パニック状態になってしまいます。
ただいきなりすべての動作を理想的にこなすことは難しいと思うので、
まずはバタ足のみを使って「けのびキック」で脱力状態を保つことを目指します。
バタ足で大切な考え方は、「水と対話するように力を伝える」ことです。
足は腕の約3倍筋肉があるため、うまく動かすことができれば最高のエンジンになりますが、
間違った足の動かし方をしたり、必要以上の力が入ると、がんばっているのに進まないし浮かない、そしてすぐに疲れてしまうという悪循環に陥ってしまいます。
ただ闇雲に足を動かすのではなく、
・どれくらいの力で体が浮いて進むようになるのかな…?
・どう動かせば足が疲れないようになるのかな…?
と考えながらおこなうことで、けのびで培った脱力を維持しながら、理想のバタ足ができるようになります。
理想のバタ足をつくる「ヘビ足」
「理屈は分かったけど、いざ泳ぐとどうしても『がんばらなきゃ!』と思ってしまう」
そう悩むのも無理はありません。
スクールで「もっと元気よくがんばってバタ足して!」と励まされ続けたお子さんなら、なおさらです。
まずは一度、水泳から離れて「お風呂の入浴剤」をイメージしてみてください。
あなたは今、お風呂に入れた入浴剤を混ぜようとしています。 このとき、どうやって手を動かしますか?
① 手に力を込め、バシャバシャと激しく音を立てて動かす
② お湯全体が混ざるように、手で水を「移動させる」ように動かす
答えは、もちろん②ですよね。 ①のように力まかせに叩いても、水面が荒れるだけで、お湯はなかなか混ざりません。実はバタ足も、これと全く同じなのです。
バタ足は水を「叩く」ものではなく「運ぶ」もの
バタ足で体が浮いたり進んだりするのは、足が水を「動かしている」からです。
水を激しく叩いて「泡」を作るのが目的ではありません。
足に伝わる水の重さを感じながら、その水をヌルッと後ろへ押し出す。 その感覚こそが、適度な脱力から生まれる「ヘビ足キック」の正体です。
このとき、足は「硬い棒」ではなく、関節の力を抜いた「ヘビ」のようにニュルニュルと動いているはずです。
つまりバタ足は、効率よく水に力を伝えられるような足の動き方を習得するということになります。
水と「対話」することで、理想の力加減が見つかる
「ヘビ足」を習得するために必要なのは、動きの「観察」です。
- どれくらいの力で動かせば、体はふわっと浮くのかな?
- どう動かしたとき、一番足が疲れずにスルスル進むかな?
このように、水と対話するように自分の感覚を探りながら泳いでみてください。
「コーチに言われた通りに動く(思考停止)」のをやめて、自分の体の声を聞き始めたとき。 けのびで培った「脱力」を維持したまま、魔法のように進むバタ足が手に入ります。
Aqua-Demy流「ヘビ足」キック 攻略練習3選
ではいよいよ、水と対話するように動かす魔法のバタ足の具体的な練習を、3つのステップでお伝えします!
このステップをこなせば、もうコーチから「もっとバタ足がんばって!」と言われなくなりますよ♪
ステップ① 手で「お水の重さ」を感じてみよう
ここでは自分の動きに対して、水がどんな反応をするかを見てみましょう!
まずは足ではなく、感覚が鋭い「手」を使って、水が自分の動きに合わせて動いてくれる感覚を掴みます。
水の中に手を入れて、手のひらや甲でゆっくりと動かしてみます。
決して力で動かそうとしないこと!ヒラヒラと舞う落ち葉のようなイメージでおこないましょう。
面に当たる水によって「重さ」が感じられれば大成功!
保護者の方の声がけポイント
水面に泡が出ていたり、速すぎる手の動きは力の入りすぎ。
「お水って、ゆっくりなでると『ぷるぷる』してるかな? それとも『ずっしり』重たいかな? 」
「手といっしょにお水が動いているか見てごらん!」
と声がけしてみてください。
最初は水が動くことそのものを楽しむことができればOKです!
ステップ② 座ったまま「ヘビさんキック」でもこもこ波づくり
次はプールサイドに座って、足で「お水の重さ」を感じる練習です。
足首をダラ〜ンとリラックスさせて、水面に「もこもこ」とした小さな山を作るように動かします。
水面を「バシャバシャ」叩くと、水面付近は泡立つようになりますが、水そのものはうまく動かせません。
足の甲でお水を「後ろへ運ぶ」ような感覚です。ビート板などを足の前に浮かべて、自分の作った波でビート板を「あっちへ行ってね〜」と動かせたら合格です!
保護者の方の声がけポイント
手でつかんだ感覚を足で感じられるかがポイントです。
手よりも力みが出やすいですが、決して責めずにこんな風に声がけしてみてください。
「足が木の棒になってないかな? ヘビさんの尻尾みたいに、ニュルニュル動かしてお水を運んでみよう!」
ステップ③ 実践!ビート板バタ足やけのびキックでスルスルと進んでみよう
いよいよ実践です。ビート板を持ったり、けのびの状態からバタ足をしてみましょう。
「がんばって進む」という気持ちは一度捨ててください。足の甲でお水と合体するイメージで動かします。
足を叩きつけるのは、お水を突き放しているのと同じ。
お水を「離さない」ように仲良く一緒に動きます。音が静かなのに、体がお魚のようにスルスルと前に運ばれていく感覚を探してみてください。
保護者の方の声がけポイント
水は液体なので、力のかけ方は非常にデリケート。
「今、お水とケンカしてないかな? 手でするみたいに、足の甲でお水と『仲良し』しながら泳いでみて。お水がきっと、君のことを遠くまで運んでくれるよ!」
と語りかけてみましょう。
まとめ
この記事では、がんばるバタ足が逆効果である理由と、水と仲良くなる「ヘビ足キック」の極意をお伝えしてきました。
最後に、指導現場でたくさんの子どもたちを見てきたからこそ言える「一生懸命な子ほど、泳げなくなる」という残酷な真実についてをお話しします。(一生懸命が悪いわけでは全くありません!)
「がんばり」が全身を縛る、負の連鎖
なぜバタ足をがんばってはいけないのか。 それは、足に込めた「力み」が全身に伝染してしまうからです。
バタ足だけで泳いでいるときはそれほど気にならなくても、手回しや息継ぎが入ってきたとき、この力みが大きな障壁となってしまいます。そしてこれは、皮肉にも一生懸命がんばろうとする子どもに多く見られる傾向があります。
水泳は全身の筋肉や関節を総動員しておこなう「全身運動」です。
ほんの一部分の力みが原因で、他の部位へ力みが伝播し、最終的には全身ガチガチ状態になりやすいのです。
特に呼吸に関しては、力みが大敵。上半身が緊張状態になるとうまく息を吐いたり吸ったりできません。
ぜひ陸上で試してみてください。肩や首に力を入れながらでは、自然な呼吸がしにくいと思います。
「がんばっているのに泳げない」という悲劇
必死に動けば動くほど、「息が苦しくなり体は沈み、進まなくなる」という事実があります。
- 力む: 力むことで、水に力が伝わりづらくなる → 十分な浮力や推進力を得られない
- 焦る: 得られる浮力が弱い分沈みやすくなり、その恐怖からさらに激しく足を動かす → 力みが増す
- 絶望: 必死に動いているのに「息ができない・進まない・沈む」の3拍子でパニックになり、力尽きる。
この負のループこそが、多くの子どもを「息継ぎクロール」の壁で立ち往生させている正体です。
「ヘビ足」は、心を守るための「余裕」
今回練習した「ヘビ足キック」は、単なる体力の節約術ではありません。 適度な脱力によって上半身を自由に保ち、どんな時も冷静に「吸って、吐く」を繰り返すための、心と体の「余裕」を作る作業です。
「お水と仲良しのバタ足」ができている子は、足の力が抜けているからこそ、全身をリラックスさせ落ち着いて呼吸のチャンスを待つことができます。
合格テストのために自分を追い込むバタ足は、もう卒業!
これからは、「楽に完泳するために、自分を支えてくれる優しいバタ足」を目指しましょう。
その優しいバタ足が、お子さんの体をふわりと浮かせ、呼吸を楽にし、水中動作をより自由にしてくれるはずです。
次回は本記事で培った、「ヘビ足キック」で得た余裕を最大限活かしつつ、「疲れない手の回し方」について詳しく解説していきます。
息継ぎクロールを笑顔で完泳できるその日まで、全力で伴走していきます!


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